体言止めとは?例文・意味・効果・ダメな理由を紹介

体言止めとは?例文・意味・効果・ダメな理由を紹介

学校の授業で習ったことは、つい使いたくなるものです。国語でいえば「体言止め」は、さまざまな文を書くときに使っている人が多いのではないでしょうか。しかし体言止めは使い方を間違えると、誤解を招く恐れがある表現技法です。

学校の授業で習うような基本から、ライターが知っておきたい実用的なところまでを網羅的に今回解説しました。ぜひ最後まで読んでみてください。

体言止めとは?意味と使い方を確認

体言止めとは、体言(名詞や代名詞。活用しない自立語)で文を終わらせる表現技法のことです。俳句や短歌などで多く用いられる表現技法で、文末を言い切りの形にして余情・余韻を持たせる効果が期待できます。

具体的には、下にまとめたような言葉が文末にくる文を指します。

■名詞

普通名詞:ものやことを表す言葉 [例]魚・家・スリッパ

固有名詞:特定のものの名称 [例]東京大学・radiko・日本国憲法

数詞:順番や数量を表す言葉 [例]1番・5月・7個

■代名詞

指示代名詞:場所・方角・物事などを抽象的に示す言葉 [例]あそこ・こちら・それ

形式名詞:物事を抽象化して表す言葉 [例]もの・こと・とき・ところ

人称代名詞:特定の人間を示す言葉 [例]彼・あなた・私

体言止めの例文と普通の文の比較

(1)単調な文章を回避するために有効なのが「体言止め」。正しく使い分ければ、読み手にも好印象でしょう。

(2)単調な文章を回避するために有効なのが「体言止め」です。正しく使い分ければ、読み手にも好印象でしょう。

(2)は、二つある文末がいずれも「です」で終わっています。そのため両者を比較すると、(2)の方が単調な印象を受けるのではないでしょうか。

(1)の方は、勢いよく・リズムよく読めると感じた人も少なくないはずです。同じ文末はなるべく使わない、使っても2回まで(3回連続は要修正)とルール化するのがいいとされています。そのため、調整のために体言止めが重宝する場合もあるのです。

体言止めの悪い効果(デメリット・ダメな理由)

冒頭でも注意喚起をしたとおり、体言止めを誤って使うとトラブルにもなりかねません。体言止めがダメな理由を押さえておきましょう。

体言止めの悪い効果【A】:感情的な読みづらさを与えかねない

一見難しそうに見えますが、これを使えば簡単。作業がスムーズ。大変な部屋の掃除もすべて解決。

上の例文のように、体言止めを何回も連続して使うと、文末が際立ち過ぎます。繰り返されれば、内容よりも文末や文調に意識が奪われてしまうものです。読者の集中力を欠き、読みづらいと感じられる恐れがあります。「です」や「ます」の場合も同様ではあるものの、体言止めはこの傾向がより強いといわれています。

体言止めの悪い効果【B】:意味や状況説明があいまいになり、わかりにくくなる可能性がある

述語の全体および送りがなを省略して簡素化する表現であるため、複数の意味を読み手に連想させる危険性が体言止めにはあります。

人気ラーメン店からのれん分けの〇〇屋が20××年に誕生。

上の例文では、「誕生」と体言止めをしています。メリットとして紹介した強調や余韻を生む効果があるものの、新しい店がすでに「誕生した」のか・これから「誕生する予定」なのかがわからない表現なのです。過去・現在・未来のいずれの意味でも解釈できてしまう表現といえます。

上の例文がプレスリリースの一部だと仮にすれば、タイトル・日付・前後の文脈から「誕生」の正確な情報が判断できるかもしれません。しかし前後のヒントが必要になる点では、あいまいな文章といわざるを得ないでしょう。読みづらくなる可能性を念頭に置きながら、体言止めにしても意味が理解できるか(前後にヒントがあるか)を検討する必要があります。

体言止めの悪い効果【C】:文章が下品に読まれかねない

『日本語の作文技術』(本多勝一,朝日新聞出版)では、「第八章 無神経な文章」のところで、「体言止めの下品さ」として【C】の注意喚起が行われています。著者の本多氏は体言止めにそもそも否定的で、「軽佻浮薄な印象を与える」表現といっているほどです。

わかりやすい文を書くには読点の位置が重要。あとは語順。言葉選びも肝心。

例文を用意しました。読んでみると、箇条書きのメモを読んでいるような印象を抱かないでしょうか。“勢いがある”といえば聞こえはいいかもしれません。しかし、本多氏のいう「下品さ」を人によっては感じかねない点に注意が必要です。書き手に余裕がなかったような印象を与えるといってもいいでしょう。

体言止めを使わない方がいい場面

下にまとめた場面では、体言止めを避けるのがいいといわれています。

直接話法の文

『日本語の作文技術』では、体言止めを直接話法では使わない(使うなら間接話法に変更する)点を注意喚起しています。

直接話法:かぎかっこ「」やひげかっこ“”を用いて、人の発言や会話をほぼそのまま記載する文の書き方

間接話法:話の伝達であり、書き手が整理して伝え直す書き方

直接話法の文は、発言のほぼそのままの書き起こしです。そのため発話者が実際に体言止めを使って話をしたことになります。

彼は体言止めについてこう話した。「体言止めには要注意。文章が単調にならないために、うまく使い分けたいね」。

例文を書いてみました。ただ、台本を読むような場合でない限り、体言止めは日常会話では使用しないと指摘されています。友人や家族との会話を文字起こしして確認してみるとおもしろいでしょう。

もちろん、「会話で話した一言一句をそのまま書く」のが直接話法の絶対的な原則ではありません。それでも会話表現として最低限の自然さは担保した方が望ましいといえるでしょう。かぎかっこを見れば、『会話かな?』と読者は想像します。にもかかわらず体言止めがくれば、『あれ?会話だよね?』と違和感を抱く可能性があるのです。

ビジネス上の文書・メール

契約書や請求書などのビジネス文書では体言止めを使用するのは避けましょう。紹介したとおり、体言止めを使うとあいまいな部分が生じてしまうため、ビジネス上のトラブルにつながる恐れがあるのです。もちろん「下品さ」を生むリスクについても紹介したとおりで、ビジネスパートナーに読ませるには、上品さに欠ける可能性にも目を向けましょう。

株式会社〇〇
〇〇さま

お世話さま。
〇〇の山田。

本日のMTGのアジェンダ
期末の予算消化
担当者の引き継ぎ

何卒よろしく。

メールのような比較的フランクなやりとりでも、体言止めを使うのには慎重になるべきです。上にメールの例を用意しましたが、読んでみて『これはひどい』と思われたのではないでしょうか。もちろん要所要所で箇条書きを入れて見やすくするのは重要です。しかし、体言止めばかりになると相手に失礼な文になってしまいます。述語の送りがなまで丁寧に書きましょう。

SEOの記事

SEOの記事のように、コンピュータに内容を理解してもらうのが重要な場合は、体言止めを使わない方がいいといわれています。タイトルや見出しなどでは大丈夫でも、本文中で使うのは望ましくないのです(詳しくは後述)。

理由としてまず挙げられるのが、コンピュータは自立語(中でも名詞・動詞・形容詞・形容動詞)しか読み込んでいない点です。自立語が適切に配置されて初めて、記事の評価が上がる仕組みともいえます。にもかかわらず日本語の意味を決める上で重要な動詞・形容詞・形容動詞が、体言止めの場合は欠損しているわけです。

またSEOは、Googleのアルゴリズムを意識して進めるのが一般的です。Googleはアメリカの企業で、日本語の文化圏内ではありません。英語には体言止めのような表現技法がないため、翻訳も対応しきれず、「意味がわからない記事」と低い評価になる可能性が高いと考えられるわけです。

体言止めのいい効果(メリット)

ここまで体言止めの悪い面を紹介してきましたが、もちろんいい面もあります。体言止めによって期待できるメリットは、大きく分けて三つといえるでしょう。

体言止めのいい効果【α】:言葉を強調でき、余韻も与えられる

さきほど紹介したとおり、言葉に勢いが生まれて、強調(とくに断定)や余情・余韻のニュアンスが生まれるのが体言止めのメリットといわれています。俳句や短歌はもちろん、コピーライティングやセールスライティングで重用されるのも、この効果のおかげといえるでしょう。

待望の新店舗が、20××年に満を辞して誕生。

「誕生だ」や「誕生です」とするよりも、急ブレーキがかかったようなインパクトが生まれ、読んだ人の印象に残りやすくなる効果が体言止めには期待できます。記事のタイトルや見出しを考えるときに、エクスクラメーションマーク「!」を付けて視覚的に目立たせながら、「誕生!!」とクリック誘引を狙うような例も見られます。もちろん悪い効果で紹介したようなリスクもあるため、述語を省略・簡素化する場合には注意しましょう。

体言止めのいい効果【β】:単調な文章を回避できる

「ですます調」の文章では、説明っぽい堅苦しさが生まれる場合があります。リズムが単調になるとの意見もあるでしょう。堅苦しさや単調さを緩和できる効果が体言止めには期待できるのです。

(a)一見難しそうに見えますが、これを使えば簡単です。作業がスムーズになります。

(b)一見難しそうに見えますが、これを使えば簡単。作業がスムーズになります。

(b)の方が、読んでみてリズムよく感じられないでしょうか。さきほど「急ブレーキ」と表現したとおり、途中で体言止めを挟んで一拍ほど間を取るような読ませ方を演出し、単調さを軽減する工夫も効果的なわけです。

体言止めのいい効果【γ】:制限がある場合に、文字数を調整・節約できる

述語を省略・簡略化するため、文字数を減らせる点がメリットになるとの見方もできます。【β】の例文(a)と(b)の文字数を比較してもらえばわかりやすいでしょう。(b)の方が2文字少ないです。

Web記事の場合は緩いですが、印刷物では文字数が細かく指定される場合が多いです。指定された文字数に収まるように1〜2文字を削る上で、体言止めが役立ちます。

体言止めを使うのが効果的な場面

余韻・余情を感じさせるために体言止めが使われて、長く寵愛されてきた俳句や短歌の作品が多いのは説明不要でしょう。芸術作品以外で、ライターが書くような文章において体言止めを使うのが効果的とされる場面を紹介します。

タイトルや見出し

紹介したとおり、タイトルや見出しに体言止めを使用するのが効果的といわれています。印刷物の場合は、書ける文字数がスペースの関係で制限されていたり、Webの場合は、SEOで上位表示させる上で望ましい文字数が語られていたりすると紹介しました。適した文字数内で文章を収めつつ、余韻や余情で魅力を向上させる上で、体言止めは便利な表現技法なのです。

なおWebの場合は、下ぐらいの文字数を目指すのがいいといわれています。参考にしてみてください。

タイトル(titleタグ):24文字以内ならば省略されずにすべて表示される
スニペット(description):最長で85文字程度

『これからのWordPress SEO 内部対策本格講座』(瀧内賢,秀和システム)

タイトル(titleタグ):全角25〜30文字程度に抑える
スニペット(description):全角120文字を上限とする

『入門SEOに効くWebライティング サイトの価値を高める正しいコンテンツの作り方』(宮嵜幸志・中島健治・石村浩延, SBクリエイティブ)

※ページタイトル(h1タグ)や見出し(h2タグ〜)については、文字数制限はないものの、30文字程度がいいと多くのサイト・ページで紹介されています。

文章の書き出し

文書の書き出し…つまり一文目に体言止めを入れるのは有効といわれています。たとえば「〜ではありませんか?」のような、疑問を投げかけて共感を得ようとする書き出しは、読んだ人に自分ごとに感じてもらいやすいと文献で推奨されている場合があります。

しかし、使い古されてチープに感じられるものも見受けられるようになりました。そのため“止めましょう”とされる型でもあるのが事実です。もちろん共感を得るという狙いは悪くはありません。あと一文目は、読み続けるための勢いづけも狙いたいものです。

そこで下の例文のように、冒頭を体言止めで短く切り、スタートダッシュ感を演出する表現が効果的な場合があります。かっこで囲って“あえて感”を出してもいいかもしれません。

散髪に行かなければと思っているところではありません?

「行かなければ…散髪」。そう思っているところではありませんか?

リスト・メモへの箇条書き

箇条書きによって情報やデータを羅列すると、整理された印象が生まれます。体言とは何かを説明したときに「名詞」と「代名詞」の具体例を箇条書きにしてリスト化しました。箇条書きをせずに表すとすると、下のような文になるでしょう。

名詞とは、普通名詞・固有名詞・数詞の3つです。

ただ上の例文を基にリストやメモを作るとしても、下のような書き方はしないはずです。各要素をまとめて省略化・簡素化するために、体言止めによる箇条書きは便利といえます。

名詞
・普通名詞です。
・固有名詞です。
・数詞です。

画像や図表のキャプション

キャプションとは、画像や図に付けられる短い説明文のことです。どのような画像や図表なのかを、見た人にわかりやすくするために書かれるメモ書きを指します。内容が端的に表現でき、なおかつ述語によって冗長的になるのを防げるため、体言止めが重宝する場面です。

体言止めに関するQ&A

「体言止め」と調べたときに、疑問として挙がってきた情報を最後にまとめてみました。参考にしてみてください。

体言止めの反対といわれる「用言止め」とは?

体言止めは「体言(名詞や代名詞。活用しない自立語)で文を終わらせる文章技法のこと」と紹介しました。“反対”となると、用言(動詞・形容詞・形容動詞。活用する自立語)で文を終わらせる書き方とでもいえるでしょう。「用言止め」という言葉が俗的に使われているようです。

ただ、用言で文を終えるのは特別なことではありません。そのため“用言止め”とわざわざ名称を付ける必要はないともいわれています。体言止めとは反対の効果が期待できるのかもしれませんが、それが“普通”なので特別に論じるのは避けたいと思います。

体言止めをしたときの句点の打ち方は?

文の終わりに句点「。」を打つのが通例です。体言止めも文の終わりであるため、普通に句点を打って問題ありません。また別の文が続く場合には当然、句点を打ちます。

おいしそうな鮭。今夜のおかずでいただきます。

ただし、かっこが絡む場合など、句点が不要とされている場合があるのも事実です。もちろんかぎかっこ「」でくくる会話文(とくに直接話法)については、さきほど指摘したとおりです。不自然にならないような場面・内容で使うようにしましょう。

「火の用心!マッチ一本、火事のもと」

なお箇条書きをしたときの文末には、紹介したとおり、句点を打たないのが通例とされています。

<記入事項>
氏名
年齢
住所
性別

例外として、『記者ハンドブック』(共同通信社)では下記のような場合は句点を打つように紹介しています。

7 文中の追い込みの箇条書きでは、箇条書きの終わりに句読点を付けない。最後の箇条と本文との切れ目には「—」を用いる。

[例]主な業務は①法律相談②訴訟費用立て替え③国選弁護人の選定−など。

『記者ハンドブック第14版』(共同通信社)

※かっこについては別記事で詳しく考察しています。ぜひ読んでみてください。

体言止めと倒置法や反復法の違いは?

「倒置法」とは、言葉の並びを通常とは逆にする表現技法です。また似たような表現技法として「反復法」が挙げられる場合もあります。反復法とは、同じもしくは似た言葉を繰り返す表現技法です。体言止めとの違いを理解するために、例文をそれぞれまとめてみました。

【体言止めの例文】
お前んち、おっ化けやーしき!
(名詞「お化け屋敷」で文が終わっている)

【倒置法の例文】
黙れ、小僧!
(動詞「黙れ」が述語として文末にあるのが通常だと考えると、逆になっている)

【反復法の例文】
読める!読めるぞ!
(「読める」を繰り返して意味を強めている)

※言葉の並べ方については別記事で詳しく考察しています。ぜひ読んでみてください。

体言止めを活用して文章を効果的に

体言止めを何気なく使っていた人も中にはいるでしょう。必ずしも悪いわけではありませんが、本記事で紹介したような悪い効果があるところまで、知らなかった人が大半ではないでしょうか。日常生活はもちろん、プロの書き手として活動している人は注意しながら使うようにしてみてください。