「財布とスマホを持った」
「財布やスマホを持った」
二つの意味の違いがわかるでしょうか。助詞「と」と「や」の違いを理解していないと、読者に伝わる情報が変わります。「と」と「や」が持つ機能の違いを解説します。

株式会社ネイビープロジェクト 代表取締役/CEO
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広告代理店・在京テレビ局・新聞社・一流国立大の“自社用”の原稿制作も支援。山口県防府市出身。2児のパパ。保育園の送り迎えで20kgダイエット成功。
助詞「と」と「や」の違いは、全列挙か部分列挙か

さっそく「と」と「や」の違いを紹介します。「と」と「や」もいずれも「列挙(並列)」の助詞である点では同じです。しかし、全列挙か部分列挙かで違いがあります。
「と」は「全列挙」です。並べたものが”すべて”であることを示します。「財布とスマホを持った」と書けば、「持ったのはその二つだけ」との意味になります。「ほかに何も持っていない」と読者に伝わる文です。
一方、助詞「や」は「部分列挙」の助詞です。「例示」の助詞ともいわれ、「や」を入れると『など』のニュアンスが暗示されます。例文にあった「財布やスマホを持った」の場合、『持ちものとして財布とスマホを挙げたが、他にもある(かもしれない)』という意味になります。
| と | 全列挙 | 並べたものがすべて |
| や | 部分列挙 | 代表例を挙げる。他にも同種のものがある |
助詞「と」と「や」を誤用すると何が起きるか

「と」と「や」が違うと、下にまとめたように、不正確な情報を読者に伝えることになります。
当日は書類や印鑑をご持参ください。
「や」を使った上の例文では、「他にも持参すべきものがあるかもしれない」というニュアンスが生まれます。「書類と印鑑のほかに何か必要なものがあるのですか?」と読者が問い合わせてくる場合もあるでしょう。「持ってきてほしいのは”これだけ”」と案内文や指示文で伝えたいなら、「と」を使うほうが望ましいです。
このカレーには玉ねぎとにんじんが入っています。
「と」を使った上の例文は「具材は玉ねぎとにんじんだけで、ほかには入っていないカレーだ」という意味になります。ただ(非常に主観的で恐縮ですが)、玉ねぎとにんじんだけのカレーは味気ないので、ほかの具も入っていると考えられるのではないでしょうか。玉ねぎとにんじんを代表例として挙げただけでほかにあるなら、「や」のほうが適切です。
助詞「と」の列挙・並列以外の用法
「と」には列挙以外に複数の用法があります。混同しないよう確認しておきましょう。
| と | 格助詞 | 連用修飾語 | 父と遊ぶ。 (共同の相手)フリーランスとなった。 (結果)恩師と会う。 (対象)彼と違う。 (比較)日本は狭いと書いてあった。 (引用) |
| 並立 | 仕事と家事の両立。 | ||
| 接続助詞 | 仮定の順接 | 儲かると、みんなやる。 | |
| 確定の順接 | 小声でいうと、聞こえにくい。 | ||
| 仮定の逆接 | 失敗しようと、関係ない。 | ||
| 単純接続(前置きなど) | 本音をいうと、怖かった。 |
助詞「や」の注意点:「やら」「とか」との違い
「や」と同じく、部分列挙を表す語に「やら」「とか」があります。三つの違いもまとめてみましょう。
- や:書き言葉でも使える。中立的なトーン
- やら:書き言葉では重くなる。「あれやらこれやら」は口語・強調的
- とか:口語表現。ビジネス文書や記事本文には不向き
多くの記事では「や」か「と」を選ぶのが基本だと捉えておくとよいでしょう。「とか」は、稚拙な印象を与えるため、ビジネス文章で使うのは避けるのが望ましいです。
なお、「や」の用法は下にまとめたとおりです。「と」と同じく、列挙・並立以外の用法と混同しないようにしましょう。
| や | 格助詞 | 並立 | 大阪や京都を回る。 |
| 終助詞 | 呼びかけ | ポチや、おいで。 | |
| 感動 | これはすごいや。 | ||
| 勧誘 | ゆっくり行こうや。 |

助詞の「と」と「や」に関するQ&A

助詞の「と」と「や」に関するよくある質問と、その答えをまとめました。
- Q「と」を二つ使った「AとBとC」のような表現は正しいですか?
- A
正しい表現です。三つ以上の要素を全列挙する場合、「AとBとC」のように、「と」を繰り返し使っても問題ではありません。ただ、読みやすさの観点から、「と」ではなく「A・B・C」と中点で区切る方法もおすすめです。


当社では、『新しい文章力の教室』(唐木元,インプレックス社)を参考にして、同じ助詞の連続は2回までOK(3回以上は要修正)としています。
「と」と「や」の場合は「AとB」「AとBとC」「AやB」「AやBやC」はOKですが、「AとBとCとD」「AやBやCやD」はNGとして、修正するルールです。
場合によっては2回でもNGとしている依頼主もいるので、相談の上で制作を進めるようにしましょう。
- Q「AやBなど」は冗長的な表現なのですか?
- A
冗長的な表現だといえます。「AやB」だけにするのがおすすめです。理由は二つあります。まず、「など」の意味が「や」にはすでに含まれています。そのため、「AやBなど」とすると意味が重複しているといえるからです。
そして、「など」を削って「AやB」と言い切った方がスッキリするのは間違いないでしょう。『新しい文章力の教室』で唐木氏は、「など」「といった」「ほか」「ら」のようなほかの存在を想起させる言葉を「濁し言葉」と呼んで注意喚起しています。
「など」「といった」「ほか」「ら」…。これら、記述したもののほかにもなんらかの存在があることを示す言葉を、唐木ゼミでは「濁し言葉」と呼んでいます。
[中略]
しかし読者としては、なんだか輪郭がモヤモヤしてきて、あいまいな印象を受けます。たとえば「AやBらがCやDなどでE、Fといった楽曲を披露する」なんて文章があったらどうでしょうか。ひとつも言い切っていなくて、なんなんだ!という気持ちにならないでしょうか。
一方で「AやBが」と誠実さを切り捨てたときに得られる強さ、キャッチーさがあります。
『新しい文章力の教室』(唐木元,インプレックス社,第1版第7刷P102〜103)
- Q「とか」はどのような場面ならば使えますか?
- A
「とか」は、会話や発言の引用や口語的なトーンが求められるコンテンツでは許容されます。インタビュー記事の発言引用、SNS投稿、ライトなコラムがその例です。ただ、紹介したとおり、ビジネス文書では「や」に置き換えるのがよいでしょう。
助詞の「と」と「や」を使い分けて原稿を書こう!

助詞の「と」と「や」について、意味や用法の違いを紹介しました。「と」は、並べたものがすべてであることを示す「全列挙」、「や」は、代表例を挙げ、他にも同種のものがあることを暗示する「部分列挙」のときに使うものです。紹介した内容を意識して、明確に使い分けられるようにしましょう。

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