修飾語・被修飾語とは?日本語における定義や実用的な並べ方を例文とともに解説

修飾語・被修飾語とは?日本語における定義や実用的な並べ方を例文とともに解説

文章がわかりにくくなってしまう原因の一例として、「修飾語」と「被修飾語」の関係の乱れが挙げられる。修飾語と被修飾語の並べ方が悪いと、文章がわかりにくくなってしまうのだ。修飾語・被修飾語がどのような言葉なのか、またそれぞれをどのように並べればいいのかを考察したい。

修飾語・被修飾語とは?(意味や見分け方も紹介)

修飾語・被修飾語の教科書的な情報を確認しよう。

修飾語・被修飾語の意味

修飾語(しゅうしょくご)とは、文中において、詳しい情報(どのように・どこで・何を…など)を他の言葉(単語や文節)に対して加える・明示する働きを果たす言葉といえる。対する被修飾語とは、修飾語による“詳しい情報を加える・明示する働き”を受ける側の言葉だ。

ライターの田中は田舎でまったり働く。

たとえば上の一文は、「働く」という述語(動詞)に対し、“どこで”の情報を「田舎で」・“どのように”の情報を「まったり」が詳しく説明している(情報を足している)構造だ。「田舎で」と「まったり」が修飾語に該当する。一方の「働く」が、修飾語によって“修飾される”言葉「被修飾語」だ。“被(かぶる・こうむる)”の字が意味するとおり、「情報を加える・明示する」という動作の影響を“かぶる・こうむる方”が「被修飾語」・“する方”が「修飾語」である。

また修飾語には「連体修飾語」と「連用修飾語」がある。それぞれ下記のようなものだ。

連用修飾語
用言(形容動詞・形容詞・動詞)を含む文節を修飾するときに使う。
上の例文でいれば「働く」を修飾する「田舎で」「まったり」が該当する。

連体修飾語
体言(名詞)を含む文節を修飾するときに使う。
上の例文でいれば「田中は」を修飾する「ライターの」が該当する。

修飾語・被修飾語の見分け方

修飾語と被修飾語を見分ける方として、以下のものが知られている。先の例文を使って解説してみよう。

(1)文節ごとで文を区切る

一般的に使われる、“ね”を入れられる箇所に「/」を入れて区切る方法で示してみた。

ライターの(ね)/田中は(ね)/田舎で(ね)/まったり(ね)/働く。

(2)主語と述語に該当する文節を確認する

述語(動詞/形容詞/形容動詞/名詞+だ・である)を探したあとで、その動作や性質の“主”を考えると見つけやすい。

述語=働く → 主語:田中は
(残った文節=ライターの・田舎で・まったり)

(3)残った文節が被修飾語

「ライターの」→「田中は」にかかる修飾語(体言[名詞]を含む文節を修飾するので連体修飾語)
「田舎で」「まったり」→「働く」にかかる修飾語(用言[動詞]を含む文節を修飾するので連用修飾語)

修飾語と被修飾語の実用的な使い方(文章をわかりやすくする「並べ方」)

修飾語・被修飾語

教科書的な説明は、ここまで。教科書的な説明とは少し逸れる部分があるものの、修飾語・被修飾語の“実用的”な使い方を考察していこう。

【補足】本記事(以下)での「修飾語」と「被修飾語」について

修飾と被修飾の関係だけに着目しやすいように、広い意味の「かかる文節」(「うける文節」の対)を「修飾語」と意味すると以下ではする。狭義の呼称でいえば、単語の場合を「修飾語」や「被修飾語」、複数の単語が連なっている場合を「修飾部」や「被修飾部」[中でも主述を伴う節で構成されている場合を「修飾節」や「被修飾節」]と使うのが正しいかもしれない。「修飾語」を補語・補足語・補足部などと読み替えてみてもいいだろう。いずれにせよ、教科書的な正しさを損ねてしまう点についてお詫びするとともに、了承をお願いしたい。

修飾語・被修飾語の実用的な並べ方

修飾語・被修飾語の実用的な並べ方は、「直結させる」ことといえる。「直結させる」と書いてはいるものの、修飾語と被修飾語をなるべく近づける方法と考えてほしい(直接つなげない方がいい場合もあるからだ)。体感するために、修飾語と被修飾語それぞれが離れている例文をみてみよう。

私は田中が山野が加藤が事故をした現場にいたと話しているのかと思った。

読んでみて、スッと内容が理解できた人は少ない(いない?)のではないだろうか。修飾と被修飾の並び方(お互いの位置関係)を図解してみよう。

修飾語・被修飾語

上のように関係性を図解すると、「私は……思った」の間に修飾語と被修飾語のセットが幾重にも重なっているのが見えてくる。文法的に破綻してはいないものの、このままでは理解しにくいはずだ。

では上の例文を、言葉や単語を変えずにわかりやすくするために、修飾語と被修飾語を直結させてみよう。修飾語と被修飾語を機械的に直結してみたのが、下の一文である。

修飾語・被修飾語

並べ方を変えただけで、修飾と被修飾の関係が理解しやすくなったのではないだろうか。修飾語と被修飾語を使いこなす第一歩として、それぞれを直結させる上のような並べ方をオススメしたい。

被修飾語がない文章やふさわしくない被修飾語を書いた文章に注意

修飾語・被修飾語

文章を書いていると、気持ちが先行して被修飾語を書き忘れる・ふさわしくない被修飾語を書いてしまうケースがある。例文を示そう。

ここで重要なのは、非単系の社会に血縁集団が存在しているばあい、必ず土地・財産などはその成員メンバーが共有するか、あるいは一成員メンバーの所有となる土地と財産とに他の成員メンバーが依存することが必要だと思われる。
引用『現代文化人類学 第3巻』(中山書店)

冒頭に書かれている「ここで重要なのは」を修飾語として、呼応する被修飾語を探してみてほしい。おそらく、被修飾語に該当する言葉は見当たらないはずだ。不備がある状態だと考えられる。具体的に分析してみよう。

「ここで重要なのは」に対する被修飾語として、「必要だと思われる」が該当すると考える案が浮かぶ人がいるかもしれない。だが「必要だと思われる」は、「ここで重要なのは」とリンクするだろうか。「重要なの(こと)は」で始まったのであれば、「〇〇だ」や「〇〇なことである」などで文末を締めるのが正しいはずだ。

上のように、構造を図式化してみると関係がよくわかるだろう。なぜ“不備がある状態”といえるかというと、図の上側に緑色で示した「ここで重要なのは、〇〇である」の文が、「である」が書かれていないために完結できていないのだ。文章全体を読んでみないと正しい判断はできないが、「ここで重要なのは」を単に削るだけで意味がわかりやすくなるだろう。もしくは「ここで重要なのは、次の2点である」と文を一旦切ってから、「非単系の……が必要だと思われる」を書く方法もある。とにかく修飾語を書いたら、それに呼応する被修飾語を書かなければならない点がイメージできたのではないだろうか。

以上のような文が生まれる背景として、修飾語と被修飾語を近づけていないことが挙げられる。修飾語と被修飾語を普段から近づける意識がないと、書いているうちに被修飾語を忘れる・ふさわしくない被修飾語を書いてしまう危険性が生まれるのだ。修飾語と被修飾語の「直結」を常に意識していきたい。

修飾語・被修飾語に関して、「否定」の言葉は要注意

修飾語・被修飾語

関連して認識しておきたい項目に、「否定の言葉」を修飾するケースがある。例文をみていこう。

木田は、大谷や野口のように親に進路を決められ、医者になるよう言われて育っていない。

「木田は医者になるように言われて育ったのか?」を疑問に思った人も多いかもしれない。考えられる可能性は下の2パターンだろう。

パターン(1) 3人とも医者になるように言われて育った

パターン(2) 大谷と野口は医者になるように言われて育ったが、木田は違う

どちらかといえば、パターン(2)のつもりで書いた文だが、パターン(1)で解釈できる余地が残っている。直結によって、否定の修飾関係を明確にしてみたい。

親に進路を決められ、医者になるよう言われて大谷や野口のように育って木田はいない。

並び替えただけで意味がわかりやすくなったのではないだろうか。助詞を調整するなど改善の余地がまだまだあるものの、パターン(1)で解釈する余地はなくなったはずだ。「離れ過ぎ」だけでもわかりにくい文章になってしまうのに加え、否定が絡むときは、パズルのような作業を行って文章をわかりやすくする必要があると頭に入れておきたい。

修飾語の一種として「主語」を捉えよう

本記事の執筆にあたってリサーチした中で、“主語と述語以外の言葉を修飾語とする”といった記述が確認できた。教科書的な説明を求めている場合は、そちらの記述に従われるのをオススメする。

ただ実用的な文章術を考察したときに、述語(述部)にかかる修飾語として他の言葉と主語を区別しないで解釈するのをオススメしたい。いわゆる主語に該当する言葉も、特別視するのではなく、連用修飾語の一種とみなすわけだ。

実は、日本語には主語が存在しないとする学説(主語廃止論)がある。参考文献『日本語の作文技術』(本多勝一、朝日新聞出版)でも主語廃止論を推しており、ネイビープロジェクトも賛同した形だ。原稿を実際に書いてみても、“主語だから”と特別視するよりも、同等に扱う方が文章がわかりやすくできると感じている(同等に扱った上での並べ方は別記事で紹介)。主語廃止論については、本多氏の著書はもちろん、本多氏も参考にしたという『象は鼻が長い』(三上章、くろしお出版)が詳しい解説をしているのでそちらをオススメしたい。

修飾語と被修飾語の並べ方を考えて文章を書こう

修飾語・被修飾語

修飾語と被修飾語の基本情報から、並べ方(お互いの位置関係)に着目して文章をわかりやすくするコツを今回考察した。修飾語・被修飾語それぞれの離れ過ぎが、文章をわかりにくくする原因だとイメージできたのではないだろうか。修飾語と被修飾語の並べ方に着目する癖をつけながら、わかりやすい文章の制作に努めていきたい。

執筆:山野隼
編集:田中利知