助詞とは?格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞などの種類も紹介

文章全体の構造を決める上で、重要な役割を果たす品詞が「助詞」である。単体では意味を成さない黒子のような単語でありながら、助詞を正しく使いこなせないとわかりやすい文章は書けないといってもいいぐらい重要だ。今回のみならず、助詞の使い方を数記事に分けてチェックしていこう。本記事では使い方の前に、品詞としての助詞の役割や特徴などをまとめていく。
助詞の特徴と役割
助詞の役割は、前後の文や単語の関係を表したり、文全体に意味を加えたりすることだ。「付属語」で、活用がない品詞であるのが助詞の特徴といえる。付属語とは、単独では意味を成さず、前にくる「自立語」(動詞・形容詞・形容動詞・名詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞)と合わせて使う言葉だ。さらに付属語は助詞と助動詞に分けられ、活用がない方、つまり形の変わらない方が助詞である(活用があり、形が変わる方が助動詞)。例文で助詞を確認しよう。
山野を田中に紹介する。
田中に山野を紹介する。
上の「を」と「に」が助詞にあたる。前にある自立語(名詞)の「山野」と、あとに続く「田中」との関係を示し、文の意味を構成する要素の一つになっている。違う助詞を使ってみよう。
山野が田中を紹介する。
山野と田中を紹介する。
「が」・「と」・「を」が助詞である。助詞が変わると、文章の意味や山野と田中の関係も変化するのがわかるだろう。
助詞の種類
助詞は一般的に、格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞の4種類に分けられる。それぞれの役割や意味を学び、使い分けに役立てよう。
■補足:文節と単語
種類を説明する上で、「文節」と「単語」を使うので事前に補足をしておきたい。
・文節:意味が通じる範囲で分割した文の最小単位。 「ね」・「さ」・「よ」などを間に入れても意味が通じるように区切れるひとまとまり。 ・単語:文節を構成する、言葉の最小単位。
格助詞とは
名詞・代名詞・数詞など体言の後ろにつき、あとに続く文節との関係を表す。使い方は一般的に以下の四つに分けられる。例文を使って働きをみていこう。
■主語「が」・「の」
助詞の中でも「が」・「の」は、文の主語や主題を示す働きがある。
冬“が”来た。
雪“の”降るころだ。
「雪の降るころだ」の「の」は、「雪が降るころだ」と「が」に置き換えられる。そのため「が」と同様に「の」も主語や主題を示す助詞と考えられるのだ。
■連体修飾語「の」
あとに続く体言(名詞)を修飾する連体修飾語であると示す働きがある。
日本語“の”勉強
上の文では「の」がすぐ後ろにある体言「勉強」を「日本語の」が修飾している。何の「勉強」なのかを示す働きをしているのがわかるだろう。
■連用修飾語「を」・「に」・「へ」・「より」・「から」・「で」
用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する連用修飾語を作る働きがある。
日本語“を”勉強する。
ライター“に”なる。
「を」および「に」がすぐ後ろの用言「勉強する」および「なる」を修飾し、何を「勉強する」のか・何に「なる」のかを示しているのがわかるだろう。「へ」・「より」・「から」・「で」の例も確認しよう。
本屋“へ”向かう。
読書“より”ライティングの方が好きだ。
プロのライターも1記事のライティング“から”始まった。
カフェ“で”仕事をする。
各助詞の後ろにある用言に対して、場所・目的・比較対象などの意味を補足しているのが確認できるだろう。
■並立「と」・「や」・「の」
「と」や「や」などの助詞は、前後の並立関係を示す。
新聞“や”雑誌がオンラインで読める。
新聞“と”雑誌を読む。
「雑誌」と「新聞」の順序を入れ替えても、それぞれの関係は変わらず対等なのがわかる。並立の格助詞「の」は、たとえば以下のような使い方がある。
やめる“の”、やめない“の”と結論を追求する。
上の例文も、「やめないの、やめるのと結論を追求する」と順序を入れ替えても並立の関係は変わらない。
以上が格助詞の“一般的”な四つの分類である。以下に格助詞をまとめる。
を・に・が・と・よ・り・で・から・の・へ・や
10個の格助詞は、「鬼が戸より出、カラ(空)の部屋」などの語呂で覚えた人もいるのではないだろうか。
■補足:「の」の解釈
テキストや学派によって「の」の解釈が異なっているのを紹介したい。たとえば「体言の代用をする格助詞」と呼ばれ五つ目の分類を推す意見がある。「書く“の”を辞める」の「の」や、「私が欲しい“の”はあなた」の「の」など、「こと」や「もの」で置き換えられる「の」だ。また「の」をそもそも格助詞としないとする意見もある。発信者によって棲み分けが諸説あるため、テキストをお持ちの人はぜひ調べてご自身でも研究してみてほしい。
接続助詞とは
「活用語」(用言および助動詞)の後ろについて、前後の文節をつなぐ助詞だ。使い方は一般的に以下の三つに分けられる。例文を使って働きをみていこう。
■順接
順接の接続助詞「ので」・「から」・「ば」・「と」・「て(で)」の後ろには、前の流れのままに順当な事柄をあらわす文節が続く。
コンセントがなけれ“ば”充電ができない。
コンセントがなかった“ので”充電ができなかった。
例文の共通点は、接続助詞「ば」と「ので」によって「コンセントがない(なかった)」だけで文を終わっていないことだ。あとに続く「充電ができない(なかった)」へ、つなげる役割を果たしているのがわかるだろう。上の例文を同じ接続助詞の「と」と「て(で)」に置き換えて、次に移ろう。
コンセントがない“と”充電ができない。
コンセントがなく“て”充電ができなかった。
■逆接
逆接の接続助詞「が」・「ても」・「ところで」・「のに」・「ものの」・「ながら」・「けれど」の後ろには、順当ではない逆の事柄(矛盾・対立)をあらわす文節が続く。
雨は降らないと彼は言った“が”、午後から雨は降った。
雨が降った“けれど”、降ってないと彼は言い張っている。
逆接の接続助詞は、逆接の場合に限って使えているかを慎重に吟味したい。なぜかというと、単純な接続(並列)もしくは順接の場合に逆接の接続助詞を使うケースがあるからだ。接続助詞の前後で反対(矛盾・対立)の内容が入っていないとそれは逆接とは呼ばない点に注意したい。
■並立
並立の接続助詞は単純接続とも呼ぶ。「が」・「けれど(けれども)」・「し」・「ながら」・「たり(だり)」・「て(で)」などを挟んで、前後に対等な文節が並ぶ。下の例文のような使い方である。
キャンプも行った“し”、サウナも行った。
料理をし“ながら”動画を観る。
このあとは打ち上げです“が”、出席しますか。
笑っ”たり”泣い”たり”と忙しい人だ。
上にある「が」の例文こそ、逆接のところで注意喚起した”非逆接的“な(つまり並列の)使い方だ。「が」や「けれど(けれども)」は、先に紹介した逆接の印象が強い接続助詞(逆接を連想させやすい)といわれる。そのため「が」や「けれど(けれども)」にも並列の役割もあるが、ほかの並列の助詞で書き換えた方が意図を的確に伝えられるだろう。
また最後の例文にあるとおり、並列の「たり」は二回以上使うのが文法的に正しい。逆にいえば一回しか使わないのは文法的に正しくないとされてきた。しかし最近は、一回しか書かれていない場合も許容されつつある(チェックする側が知らないだけの可能性もあるが)。Wordの校正機能でも指摘が入るほどの基本事項なので、基本を押さえつつメディアやクライアントの意見も聞いて推敲できるとよいだろう。
副助詞とは
特定の品詞に限らずいろいろな語に意味を付け足す。種類は豊富で20以上もある。代表的な「は」・「こそ」・「も」・「さえ」の使い方をみていこう。
■副助詞「は」の三つの意味
副助詞「は」には「区別」・「強調」・「繰り返し」の三つの意味がある。順に例文で確認しよう。
キャンプ“は”好きだ。 (区別)
「キャンプは」の「は」は、キャンプ以外と区別する意味がある。たとえば「サウナは嫌いだが、キャンプは好きだ」とするとわかりやすいだろう。「キャンプが好きだ」が、区別のない純粋な文といえる。
キャンプ好きと“は”思えない。 (強調)
副助詞「は」を入れると、「キャンプ好きと思えない」よりも、「キャンプ好き」を強く否定している(「キャンプ好きと」を強調している)ように感じられるのではないだろうか。
もう酒は飲まないと言って“は”飲んでいる。 (繰り返し)
繰り返している(「酒は飲まない」と“何度も”言っている)との意味を付け足しているのがわかるだろう。
■副助詞「こそ」
「こそ」は、より限定的な強調の意味をあらわす。「は」の強調と比較しながらみていこう。
キャンプ“こそ”アウトドアだ。
「キャンプは(が)アウトドアだ」としても強調の意味は伝えられるが、「こそ」の方が主張したい結論を明確にできる。
■副助詞「も」の三つの意味
副助詞「も」には「同類」・「強調」・「並立」の三つの意味がある。順に例文で確認しよう。
料理“も”得意だ。 (同類)
料理以外にも得意なものがある意味を付け足しているのがわかる。
夕食が出来るまで2時間“も”かかった。 (強調)
「夕食が出来るまで2時間かかった」よりも、2時間を強調して長く感じさせている。
キャンプ“も”料理“も”好きだ。 (並列)
どちらも同じくらい好きだという意味を加えている。
終助詞とは
文末に付いて、情報伝達の態度やさまざまな意味をあらわす役割がある。「か」・「な」・「ね」・「よ」などがある。例文をいくつか書いてみたので、使い分けと意味を確認していこう。
■疑問・質問
元気です“か”。
正しい“の”。
どこに行こう“ね”。
食べていい“かしら”。
※あとに「?」がつくとよりわかりやすい。
■反語
休んでばかりでよいのだろう“か”。
※疑問と同じ形をとってはいるが、疑問文ではない。主張したい内容と反対の意味を強くあらわすためのレトリック「反語」だ。疑問文はあとにその答えが書かれるが、反語の場合は書かれない。「いや、よくない」とあとに続けるとわかりやすくはなるものの、そもそも反語表現をした意味がない。最初から「休んでばかりではよくない」と書いた方が親切だ。あえて反語を使う意図を考えながら書いていけるとよいだろう。
■禁止
休んでばかりいる“な”。
■感動
完璧な映画だ“な(あ)”。
これはすごい“や”。
ついに達成した“か”。
全然違う“よ”。
■念押し
映画館に行ってくれるよ“ね”。
約束だ“よ”。
一生友達だ“ぞ”。
しっかり伝えたから“な”。
■呼びかけ・勧誘
お客さん“や”、ちょっと寄っていきな。
お客さん“よ”、聞いてくれ。
上のほかにも細分化すれば、強調ともいわれる「必ずキャンプに行く“ぞ”」や、軽い断定ともいわれる「明日は晴れる“さ”」など、いくつか終助詞と呼ばれる使い方が存在するといわれる。あくまでライティングに役立つ範囲で今回は説明を終えるが、気になる人はぜひご自身でも調べてみてほしい。
助詞を使い分けよう
助詞の種類を把握した上で、実際に文章で使われている助詞の種類を考えてみよう。
今回みんなでキャンプに行けなかったから、次こそは行けるように準備しようね。
助詞を分類しやすいように、意味が通じる最小単位の文である文節ごとに分解しよう。
今回/みんなで/キャンプに/行けなかったから、/次こそは/行けるように/準備しようね。/
文節に区切ったら、それぞれ助詞の種類を考えてみてほしい。下のように分類できるだろう。(※助詞がない文節は除く。)
みんな“で”:格助詞(連用修飾語)
キャンプ“に”:格助詞(連用修飾語)
行けなかった“から”:接続助詞(順接)
次“こそ”“は”:こそ:副助詞(強調)・は:副助詞(区別)
準備しよう“ね”:終助詞(呼びかけ)
「次“こそ”“は”」のように助詞が重なるケースもある。なお、「行ける“ように”」は助詞ではなく、助動詞「ようだ」の連用形である。
今回は、わかりやすい文章を構成する上で肝心な「助詞」を勉強した。助詞の種類や役割を知れば意味の理解も深まり、文章の読解力も上がるだろう。文章を書く場合は、伝えたい主旨を的確に表現する助けにもなるはずだ。何度も反復して着実に使い分けていきたい。
執筆:山野隼
編集:田中利知
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