修飾の語順は4つの原則で考える

修飾の語順は4つの原則で考える

文章を書くとき、一つの言葉に修飾する言葉をいくつも並べていないだろうか。詳しく伝えようとすればするほど、修飾語は多くなりがちだ。しかし修飾語が多いと、かえって読みにくい印象を読者に与えてしまいかねない。詳しい内容を伝えながら、わかりやすい文章を書くためにも、修飾の語順をスマートにする四つの原則を一緒に勉強していこう。

【注釈】
修飾と被修飾の関係だけに着目しやすいように、広い意味の「かかる文節」(「うける文節」の対)を「修飾語」と本記事では記述している。

原則(1) 節と句の順番

修飾の語順

一つ目の原則が「節を先にし、句をあとにする」である。さっそく説明に入ろう。床に布が置かれているのを想像してみてほしい。布の特徴は下の三つ。

・赤い布
・縫い目の入った布
・厚手の布

上の三つをまとめて一文にする場合、布を形容する修飾語の順番はどうすればよいだろうか。まずはそのまま並べてみよう。

赤い縫い目の入った厚手の布

上のようにまとめると、“赤い縫い目”がある布と読む人もいるだろう。それでは順番を逆さまにしてみよう。

厚手の縫い目の入った赤い布

今度は、縫い目が厚くなったように感じたかもしれない。あらためて並べ替えのパターンを列挙していこう。

(a) 赤い縫い目の入った厚手の布
(b) 厚手の縫い目の入った赤い布
(c) 赤い厚手の縫い目の入った布
(d) 縫い目の入った赤い厚手の布
(e) 縫い目の入った厚手の赤い布
(f) 厚手の赤い縫い目の入った布

以上の六つのパターンが考えられる。この中で誤解しやすい・読みにくい文を選んでみてほしい。恐らく(a)・(b)・(c)・(f)の四つではないだろうか。残る(d)と(e)は誤解が生まれにくい(“ない”といってもいいかもしれない)。(d)と(e)の共通点を検討し、さらにほかの四つとの違いを比べて、修飾語の適切な順番を考えてみると下記の点に至る。

DとEの共通点=「縫い目の入った」が文頭にある

つまり「節を先にし、句をあとにする」の原則が当てはまるのだ。「縫い目の入った」という節が先にあり、「赤い」や「厚手の」という句が前にある。原則(1)に従えば、先に挙げたような誤解につながる文章は減らしていける。

【補足】「句」と「節」の違い

念のため、区と節の違いをおさらいしておこう。

句:2語以上の語で構成される文節 (例) 赤い布

節:主語と述語を含む文節 (例) 縫い目の入った (「入った」が述語)

※「句」も2語以上のまとまりだが、「節」との違いは主語と述語がない点である。

格助詞を用いた場合

AがBをCに紹介した。

格助詞を用いた場合も考えてみよう。上の文章は、ガ・ヲ・ニという三つの格助詞が使われている。それぞれ格助詞としての呼び方は下のとおりである(言語学者である三上章氏の呼称に従う)。

Aガ…主格
Bヲ…対格
Cニ…方向格

いずれも「紹介した」を修飾する補足語である。また三つの格助詞は対等で、順序もどれが先でも文法的には問題ない。

(α)AがBをCに紹介した。
(β)AがCにBを紹介した。
(γ)BをAがCに紹介した。
(δ)BをCにAが紹介した。
(ε)CにAがBを紹介した。
(ζ)CにBをAが紹介した。

六つの文は、「紹介した」という述語をめぐるA・B・Cの三人の関係性を表すものだ。どの文章も中心は述語で、A・B・Cの三人は付属物に過ぎない。つまり付属物である補足語は、順序も自由であり、順序によってわかりやすさに差は出ない。また順序を変えても文章の結論は変わらないとわかるだろう。格助詞を用いたケースの大前提を把握したところで二つ目の原則に移ろう。

原則(2) 修飾語の長短

修飾の語順

二つ目の原則は「長い修飾語は前に、短い修飾語は後に」である。修飾語が増えると、語の多さで句や節に長いものと短いものがでてくるはずだ。並べ方の原則として、長いものを前に・短いものを後に置くようにしてみよう。原則(1)の格助詞を使った例文「AがBをCに紹介した」に以下の修飾語を加えて考えていこう。

例文(Ⅰ)
私が涙が出るほど大好きなB
私の恋人C

(あ)Aが私が涙が出るほど大好きなBを私の恋人Cに紹介した。
(い)Aが私の恋人Cに私が涙が出るほど大好きなBを紹介した。
(う)私が涙が出るほど大好きなBをAが私の恋人Cに紹介した。
(え)私が涙が出るほど大好きなBを私の恋人CにAが紹介した。
(お)私の恋人CにAが私が涙が出るほど大好きBを紹介した。
(か)私の恋人Cに私が涙が出るほど大好きなBをAが紹介した。

自然に読めてわかりやすい文章は(え)だろう。逆にわかりにくく、不自然に感じるのは(あ)・(い)・(お)ではないだろうか。読みやすさ違いを考えながらもう一つ例文をみていこう。

例文(Ⅱ)
秋空が染まる紅葉に鮮やかな色を与えた。

この文も、ガ・ヲ・二の格助詞を使って「与える」を補足している。すでに修飾語の順番に読みづらさを感じる人もいるかもしれない。さらに順番を変えて六つのパターンで並べてみよう。

(一)秋空が染まる紅葉に鮮やかな色を与えた。
(二)秋空が鮮やかな色を染まる紅葉に与えた。
(三)染まる紅葉に秋空が鮮やかな色を与えた。
(四)染まる紅葉に鮮やかな色を秋空が与えた。
(五)鮮やかな色を秋空が染まる紅葉に与えた。
(六)鮮やかな色を染まる紅葉に秋空が与えた。

六つを比較すると、先に例で挙げた(一)よりも(四)や(六)の方が読みやすくはないだろうか。(一)は「秋空が染まる……」が一つのまとまりと誤解する人もいるだろう。(四)と(六)で読みやすい方は(四)と答える人のほうが多いのではないだろうか。各文の読みやすさに違いが出てきたところで、自然で読みやすかった語順をピックアップしよう。

例文(Ⅰ)

私が涙が出るほど大好きなBを
私の恋人Cに
Aが       (紹介した。)
例文(Ⅱ)

染まる紅葉に
鮮やかな色を
秋空が       (与えた。)

修飾語のまとまりを見やすくすると、二つの共通点は「長い修飾語が先にある」ことだ。原則⑵「長い修飾語は前に、長い修飾語は後に」が体感できただろうか。シンプルな原則なので、文章を書く際には修飾する言葉の長さを意識してみよう。

原則(3) 状況と重大さ

修飾の語順

つづいて、三つ目の原則「大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ」を説明していこう。三つ目の原則は、文章の内容にも踏み込んだ考え方である。

例文(Ⅲ)
修飾の語順

上の例文を自然な語順で並べ替える。

東京湾の遥か沖に太郎が乗ってきた豪華客船が小さな点となって消えていった。

太郎が乗ってきた豪華客船が東京湾の遥か沖に小さな点となって消えていった。

上の二つの文は自然に読める語順ではないだろうか。いずれも「小さな点となって」があとに来る。共通点がわかったところでもう一つ例文をみてみよう。

例文(Ⅳ)

これは原則(2)で使った例文をベースにしたものである。

◯ 秋晴れの空が染まる紅葉に鮮やかな色を与えた。

× 鮮やかな色を染まる紅葉に秋晴れの空が与えた。

比較用に読みにくい語順も書いておいた。例文(Ⅲ)と(Ⅳ)の共通点を文章の内容から探ってみよう。まずは例文(Ⅲ)と(Ⅳ)の情景をそれぞれ想像してみてほしい。私の頭に浮かんだ映像を言語化すると下のようになる。

(Ⅲ)大きな「東京湾」の真ん中に「小さな点」がある。

(Ⅳ)広く青い「晴れた秋の空」に赤く「紅葉」した葉が点在している。

表現の仕方は人それぞれ違うだろうが、例文(Ⅲ)と(Ⅳ)を想像すると、例文(Ⅲ)は「東京湾」、例文(Ⅳ)は「空」が占める面積が多いのではないだろうか。二つの文章では、冒頭に書いた「東京湾」と「秋晴れの空」が情景の根幹になり、「小さな点」や「鮮やかな色」はあくまでも小さな状況に過ぎない。「大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ」の原則(3)とおり、文章の意味や内容も修飾語の順序に関わってくるのがイメージできたのではないだろうか。

原則(4) 単語同士の親和性

修飾の語順

最後の原則(4)は、「親和性の強弱によって順序を替える」である。すでに紹介した三つの原則は、長さや状況など「物理的」な観点が判断基準だった。しかし文章を読む上で、「なんだか読みにくい」など心理的な印象で読みにくさを感じた経験はないだろうか。さっそく例文をみていこう。

例文(Ⅴ)
重い現場の空気が凍える冬の寒さに拍車をかけた。

この一文は下のような構造をしている。

修飾の語順

被修飾語「拍車をかけた」に対して、修飾語の順序を原則(1)〜(3)を用いて考えてみよう。

原則(1):そもそも節がなく。句の比較でも大差がない。
原則(2):文字の長さに大差はない。
原則(3):状況の想像は人それぞれだが、1と2で大小明らかな差はない。

このように複数の修飾語で、物理的な順序の良し悪しに大差がない場合はどうしたらいいだろうか。おそらく「空気が凍える……」が読みにくいと感じた人もいるだろう。もちろん文章中の「空気」は、「雰囲気」と言い換えられ、心理的なつらさを表している。しかし「空気」と「凍える」という“親和性”の高い言葉が並び、物理的な肌寒さを連想させてしまっているのだ。単語同士の親和性を詳しくみてみよう。

修飾の語順

上の「親和領域」は私がイメージする単語同士の結びつき具合である。直接つながっている「凍える」と「冬」はもちろん、今回問題なのは「空気」と「凍える」も親和性が強い点だ。

修飾の語順

つづいて「空気」も含めた三語の親和性を図でまとめてみた。上の図で三つの言葉が交わる親和領域が、文書のわかりにくさ(混乱度)につながると考えてみよう。「空気」と「凍える」の親和領域があるために、「冬」と「凍える」の親和領域に割り込んで、関係性(「混乱度」とした領域)を生んでしまっている。このように親和性の強い単語が並ぶと、いくら前後に文脈があっても心理的に読みにくさを払拭するには工夫が必要だ。
以上のような心理的要因を踏まえ、下の語順にした方が誤解もなく読みやすいと考えられる。

凍える冬の寒さに重い現場の空気が拍車をかけた。

「空気」と「凍える」の親和性の高い語を遠ざけて書き換えただけで、読みやすさが向上したのではないだろうか。ただ単に書いているだけでは気付きにくい混乱度に、慎重に配慮しながら原則(4)のとおり「親和性の強弱によって順序を替える」を実行すると、心理的な要因による文章の読みやすさが解消できるだろう。

最も重要な原則

修飾の語順

わかりやすい文章を書くために知っておきたい修飾語の順序について四つの原則を紹介した。自然な配置にするための選択肢は増えたが、四つの優先順位も気になるところだろう。下記の順で並べるのをオススメする。

原則⑴ 節を先に、句をあとに。
原則⑵ 長い修飾語を先に、短いものをあとに。
原則⑶ 状況が大きい文、重要性が高い内容を先に。
原則⑷ 親和性の強弱によって配置転換を行う。

四つの原則のうち、特に重要なのは⑴と⑵である。また⑴と⑵はいずれも同じぐらい重要で、文章の内容よって優先順位を替えるといいだろう。

最後に、今回紹介した四つの原則は筆者を含めた記事を書く人の武器になる。「覚えるべき原則」と硬く考え過ぎず、“わかりやすい文章を書ける術が四つも増えた”と楽しみながら習得していってほしい。

執筆:山野隼
編集:田中利知