文章記号・約物の使い方〜句点・中点・括弧〜

文章記号・約物の使い方〜句点・中点・括弧〜

文章を書くとき、文章記号(約物)をしっかり考えて使えているだろうか。たとえば読点には、入れるべき場所に関する原則がいくつかあり、一つの記事を書くだけでも数えきれないほどの検討が必要だ。ただ文章記号は数多く存在するため、中でも句点・中点・括弧をメインに文章記号の使い方を今回学んでいこう。

文章記号・約物を確認しよう

文章記号・約物

文章記号はどのようなものがあるか。確認できるように、下に一覧表を用意した。執筆時に活用してほしい。

[文章記号・約物一覧]
。          マル・丸・句点・終止符
、          テン・点・句切り点・読点・コンマ
・          ナカテン・中点・中黒・ナカポツ
(            マルカッコ・パーレン      ※二個で一対
「          カギカッコ           ※二個で一対
『          二重カギカッコ         ※二個で一対
“            ヒゲカッコ・チョンチョンカッコ ※二個で一対
?            疑問符
!             感嘆符
=           イコール
−          ハイフン
゠          二重ハイフン
……      点線・リーダー
、、、   傍点・ゴマ
——	   中線・長棒

『日本語の作文技術』(本多勝一,朝日新聞出版)

上の記号以外にもカッコ類では〈〉や〔〕など多様である。使用頻度が高い記号を選んで使い分けを学んでいこう。

句点「。」(丸)は、文章の終わりに必ず打つ

文章記号・約物

句点を使う上での約束は「句点は文章の終わりに必ず打つ」である。当たり前だと思われる人も多いだろうが、下の例文をみながら、句点の大事さを一緒におさらいしていこう。

(1)店長は客を介抱た

打ち間違いかと思った人もいるだろう。「介抱した」の「し」をあえて抜いてある。もちろん間違いは一つではない。句点が抜けている。次の例はどう感じるだろうか。

(2)店長が客を介抱した机が3台並んでいた通路は狭かった

まず、読みにくいと感じたのではないだろうか。例文にある状況を整理すると下記のようになるだろう。

店長が客を介抱している場所は、机が3台も並んでいる狭い通路だった

先の例文も同様だが、文末に句点がないのにお気づきだろう。(2)に句点を打つならばどこだろうか。

(2)店長が客を介抱した机が3台並んでいた通路は狭かった

文末以外にも打つ場所があるか、少し考えたのちに、下の文をみてほしい。

店長が客を介抱した。机が3台並んでいた。通路は狭かった。

こうすると文章が三つ存在しているとわかる。そっけない文章に感じるかもしれないが、(2)と比べるとわかりやすさは歴然なはずだ。句点を使う上での約束「句点は文章の終わりに必ず打つ」の大事さを感じられたのではないだろうか。シンプルだが、おろそかにすれば読み手を混乱させる可能性が高い。読者に良心的な書き手として、今から習慣にしていこう。

なお仮に句点の使い方を間違えるとどうなるか、少しだけご紹介したい。

店長が客を介抱した机が3台。並んでいた通路は狭かった。

さきほどと同じ(2)の例文を少し書き換えた文だが、思い浮かぶ情景が変わってくるだろう。まるで店長が3台の机をベッドのように使っている様子が思い浮かぶ人もいるかもしれない。そして特によくわからないのが、句点のあとに続く「並んでいた通路」である。通路自体が並んでいたのか、もしくは日本語の曖昧さを許容して文の主語である「私」が抜けているのか……。今回は意図的に句点の位置を動かしたが、仮に変な場所に句点をタイピングした場合、文章の意味がまったく違ってしまう危険性がわかってもらえたのではないだろうか。

括弧(カッコ)の使い方の代表例

文章記号・約物

括弧(カッコ)には多くの種類があり、その分だけ使い方もさまざまである。特にカギカッコは、機械的な使い分けだけではなく、文脈で意味をもって使い分ける場合もあるので意識しながら文章を書いていくのが重要だ。

会話表現

「今日はカギカッコの使い方を勉強します」と先生が言った。

括弧の用法として頻出するのは、会話表現やセリフなどを「」で囲う場合だろう。会話文の始めと終わりをシンプルに囲えばいい。では、“会話文の中に会話文を入れる”場合はどのように書けばよいだろうか。

「先生が『今日はカギカッコの使い方を勉強します』と言っていたよ」と生徒Aが言った。

カギカッコの中にカギカッコを入れたい場合は、二重カギカッコ『』などで対応するのが一般的な用法とされる。なお二重カギカッコは、下記のように作品名やタイトルをわかりやすく見せる場合にも使われるものだ。

作品名・タイトル・名称

『日本語の作文技術』(本多勝一,朝日新聞出版)

上の例文のように、文献などを紹介するときは、本のタイトルを二重カギカッコ『』で囲ったあとに、著者名・出版社名・出版年・版数・ページ数などをマルカッコ()で囲う場合がある。Webの場合は、ページのタイトルを二重カギカッコで囲ったのち、サイトや管理者の名称およびURLなどをマルカッコ()に入れて記載するのがよいだろう。

強調

文中で一文を強調したり、読者に注目させたりするためのアクセントのような役割でもカッコは用いられる。本記事でもすでに、「」や“”を使って強調したい文言を囲ってきた。すべてをたとえばカギカッコだけにしてもいいのだが、紹介したとおりカッコには多くの種類があるので、使い分けて強調の程度の違いを表してみるのもよいだろう。

引用

「吾輩は猫である。名前はまだ無い」
(『吾輩は猫である』夏目漱石)

原文のある文章を引用する場合は、「引用元の文章をそのまま使用すること」を厳守しよう。引用した文を自分なりに変更してはいけないからだ。最悪の場合、作品の侵害として受け取られる可能性もある。また引用する場合は上のように出典を明記することも合わせて覚えておきたい。「作品名・タイトル・名称」のところで説明したように、より細かく書いてもいいだろう

ヒゲカッコ「“”」

すでに登場しているヒゲカッコ“”の使い方もチェックしておこう。ヒゲカッコ“”は、「いわゆる”天才”というやつだ」のように、俗っぽさを明確に示したい場合や皮肉っぽさを表現する場合に用いる。
(なお本記事を編集した担当は、「」を用いるほど強い強調をしたくない場合[ちょっとした強調をしたい場合]や、正式でないものを書いているときの目印としてヒゲカッコ“”を使っている)

ナカテン(中点)「・」の使い方の代表例

文章記号・約物

次は中点の使い方を確認していこう。筆者は中黒(ナカグロ)と呼ぶことが多いが、呼称は伝わればどちらでもかまわない。中点を使うケースは主に2つある。

固有名詞

ジョニー・デップ
サグラダ・ファミリア

上記のように、外国の人物名やものの名称に使われているのはあなたもよく目にするだろう。

並列・同格

味玉・チャーシュー・白ネギ・メンマを添えて完成です。

上は、ラーメンのトッピングを説明した文章だ。中点で並んでいる「味玉・チャーシュー・白ネギ・メンマ」は、ラーメンのトッピングであるという意味的な共通点はもちろん、四つとも名詞であるという品詞の共通点もある。このように何かしら共通点がある言葉を並列させるときに中点を使うのがオススメだ。

世界の歌姫・マドンナの邸宅。

つづいて同格の例文を書いてみた。同格の場合は、中点を挟んで「=」の関係性が成り立つ。別の言い方をすれば、「世界の歌姫」が「マドンナ」の説明をしているような関係と考えてもいいかもしれない。ただ単に「マドンナ」と書かれても、世界には多くの“マドンナ”がいる。そのため、「どのマドンナ?」となるところを、「世界の歌姫・」を付けて説明しているのだ。不特定な名詞を特定・限定・定義するための役割を同格の中点は果たしているといってもいいだろう。

なお中には、上で説明した並列・同格を示す場合に、中点ではなく読点(、)を使っている人も多いかもしれない。しかし並列・同格を示す場合は、読点を極力使わない方がよい。理由は、原則に則って正しく打たれた読点と混同し、文章をわかりにくくしてしまうからだ(詳しくは別記事で紹介する)。

ハリウッドスター・ジョニー・デップ・アンジェリーナ・ジョリーが主演する映画。

上のように外国人の名前が入った文だと、「主演」が誰なのか・何人いるのかが一見しただけではわからない。有名なスターの名前を使っているからわかる人ももちろんいるだろう。しかし名前を知らない人には呪文のように見えるはずだ。

           ジョニー・デップ
ハリウッドスター・       ・               が主演する映画。
                           アンジェリーナ・ジョリー

固有名詞と並列・同格に分けて分解してみた。「ハリウッドスター」のあとが同格、「ジョニー・デップ」と「アンジェリーナ・ジョリー」の間にあるのが並列の中点であるのを上の図で示している。ジョニー・デップもアンジェリーナ・ジョリーも、ハリウッドスターであり、映画に主演しているのが伝わるだろうか。また読みやすくするには、中点を使わず「ハリウッドスターであるジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーが主演する映画」とする方法もある。「と」や「や」を使えば二つ以上の並列はクリアできる。

固有名詞を三つ以上並べる場合

ジョニー・デップ・アンジェリーナ・ジョリー・ブラット・ピット・ペネロペ・クルスの4人が出演する映画。

上のように、2種類の中点が混ざっていて、境界線がわかりにくい文も存在する。この場合は、下記のように「二重ハイフン」を使ってもいいかもしれない。歴史の教科書などで二重ハイフンが使われている場合もあるようだ。

ジョニー゠デップ・アンジェリーナ゠ジョリー・ブラット゠ピット・ペネロペ゠クルスの4人が出演する映画。

また二重ハイフンを使うのに抵抗がある人もいるだろう(編集の担当者はまさにそうだ)。その場合は、下記のように固有名詞は中点を使いスラッシュ/で区切る方法もある。ただし媒体によってルールが異なるため、媒体の担当者と相談の上で表記ルールを検討するのをオススメしたい。

ジョニー・デップ/アンジェリーナ・ジョリー/ブラット・ピット/ペネロペ・クルスの4人が出演する映画。

文章記号や約物は使い分けが肝心

文章記号・約物

文章記号や約物を適切に使えば、文章がわかりやすくできるのがイメージできただろうか。筆者自身も、これまでニュアンスや雰囲気で記号を使っていたと気づけた。句点にいたっては、場所を間違って記載すると文章の意味そのものが変わってしまう重要性があることも自戒できたと思っている。本記事でまとめた文章記号は、どこで・どれを使えばいいかを意識しながら今後は使っていこう。

執筆:山野隼
編集:田中利知